土地を売却しようとして現地を確認したところ、「境界標が見当たらない」「どこまでが自分の土地なのかわからない」という問題に気付くことがあります。
特に、相続した土地や長期間所有している土地では、購入当時の資料が残っていなかったり、昔あった境界杭が工事などによってなくなっていたりするケースも珍しくありません。
さらに難しいのが、隣地所有者と境界について認識が違うケースです。
売主は「このブロック塀までが自分の土地」と考えていても、隣地所有者は「境界はもっと内側だと思っている」ということがあります。
このような土地を所有していると、「境界が確定していない土地は売れないのでは?」と不安になるかもしれません。
結論からいうと、境界がわからない、あるいは隣地との境界が未確定だからといって、土地そのものを売却できないとは限りません。
ただし、境界が明確な土地と比較すると、買主が購入後のトラブルを心配したり、住宅ローンや建築計画を慎重に検討したりするため、売却条件に影響する可能性があります。
特に土地を購入して新築住宅や収益物件を建てたい買主にとって、「実際に使える土地がどこまでなのか」は非常に重要です。
登記簿に100㎡と記載されていても、現地で境界が確認できず、隣地所有者との認識にも違いがあれば、その100㎡を前提として安心して建築計画を進めにくくなります。
そのため、境界未確定の土地を売却するときには、最初から「測量しなければ売れない」と考えるのではなく、現在どの程度まで境界を確認できるのか、測量するとどのくらいの費用と期間が必要なのか、現況のまま購入する買主がいるのかを整理することが重要です。
この記事では、境界がわからない土地や隣地との境界が未確定な土地を売却したい方に向けて、境界と筆界の違い、測量の種類、境界確定が必要になりやすいケース、隣地所有者が立ち会ってくれない場合の対応、筆界特定制度、売却価格への影響などを詳しく解説します。
境界がわからない土地でも売却できる?
まず知っておきたいのは、境界が確定していないことだけを理由として、土地の売買そのものが一律に禁止されるわけではないということです。
売主と買主が土地の状態を理解し、どのような条件で引き渡すのかについて合意できれば、境界未確定の状態で売買を検討できるケースがあります。
ただし、「法律上売買できるか」と「実際に買主が安心して購入できるか」は別の問題です。
土地を購入する人は、購入後に建物を建てたり、駐車場として利用したり、将来再び売却したりすることを考えます。
そのため、境界が明確でない土地については、「本当にこの面積を使えるのか」「隣地とのトラブルが起きないか」「建築計画に影響しないか」といった不安が生じます。
売却できるかどうかだけではなく、どのような買主なら現在の状態を理解して購入できるのかまで考えることが大切です。
「境界標がない」と「境界トラブルがある」は同じではない
境界問題を考えるときには、現在どの程度問題があるのかを整理する必要があります。
たとえば、現地に境界杭が見当たらないものの、過去の確定測量図や境界確認書が残っており、隣地所有者との認識にも争いがないケースがあります。
この場合は、「境界標がない」という問題はあっても、境界そのものについて深刻な紛争が起きているとは限りません。
一方、資料がなく、隣地所有者と境界位置について認識が異なっている場合は状況が大きく違います。
さらに、ブロック塀やフェンスが越境している、建物の一部が境界を越えている可能性があるといった問題が加わることもあります。
したがって、
境界標が見当たらない
過去の測量図が見つからない
隣地所有者と認識が違う
越境の可能性がある
という状態をすべて同じ「境界未確定」として扱うのではなく、問題の程度を分けて考える必要があります。
「筆界」と「所有権界」の違いを理解する
土地の境界を考えるときに知っておきたいのが「筆界」と「所有権界」です。
法務局によると、筆界とは土地が登記された際に、その土地の範囲を区画するものとして定められた線をいいます。
筆界は隣地所有者同士が「今日からここを境界にしよう」と話し合うだけで自由に変更できるものではありません。
一方、一般的に「境界」と呼ばれているものには、所有権がどこまで及ぶのかという意味で使われる場合があります。
通常は筆界と所有権界が一致していることが多いものの、事情によって一致しない場合もあります。
土地売却では単純に「フェンスがある場所=法的な筆界」と判断しないことが大切です。
昔からそこにブロック塀があるからといって、その中心や端が必ず登記上の筆界とは限りません。
まず登記関係の資料を確認する
境界がわからないからといって、すぐに測量を依頼する必要があるとは限りません。
最初に行いたいのが、手元に残っている資料と法務局に備え付けられている資料の確認です。
土地の売買契約書、重要事項説明書、過去の測量図、境界確認書、隣地所有者との覚書などが残っていないか探します。
相続した土地なら、被相続人が保管していた不動産関係の書類も確認しましょう。
古い書類の中から、以前実施した測量資料や隣地所有者の署名がある境界確認書が見つかることがあります。
また、法務局では登記事項証明書、公図、地積測量図などを確認できます。
ただし、地積測量図があるからといって、現在の売却にそのまま利用できるとは限りません。
作成された年代や精度なども確認し、必要に応じて土地家屋調査士などの専門家に相談します。
スタッフ植松「境界がわからない土地の相談では、私は最初から『確定測量しましょう』と決めるのではなく、まず残っている資料を確認することが大切だと考えています。昔の測量図や境界確認書が見つかれば、状況が大きく変わることがあります。相続した土地なら、実家に残っている古い不動産書類まで一度探してみる価値があります。」
現況測量と確定測量は何が違う?
土地の売却でよく使われる言葉に「現況測量」と「確定測量」があります。
現況測量では、現地の境界標、塀、フェンス、道路などを確認し、現在の土地の状況を測量します。
一方、確定測量では、資料調査や現地測量を行ったうえで、隣接地の所有者などと境界について確認していくことになります。
道路や市有地など公有地と接している場合には、行政との協議が必要になるケースもあります。
そのため、確定測量は現地を測るだけで終了するものではありません。
隣地所有者への連絡、立会い、資料確認などが必要になるため、土地の状況によって期間も費用も変わります。
売却まで時間がない場合には、査定を依頼した段階で境界状況を確認し、必要なら早めに測量について相談することが重要です。
どんな土地なら確定測量を検討した方がいい?
確定測量を検討する必要性が高くなりやすいのは、買主が土地面積や境界位置を重要視するケースです。
代表的なのは、更地として売却し、買主が新築住宅を建てる場合です。
建物配置、駐車スペース、隣地からの離隔などを検討するためには、土地の形状と境界位置が重要になります。
また、土地を分筆して複数区画として売却する場合も、境界確認が重要になります。
たとえば100坪の土地を50坪ずつに分けて売却するのであれば、元の土地の境界を確認したうえで分筆手続きを進める必要があります。
一方、隣接地の所有者や不動産事業者が現況を理解したうえで土地全体を購入するケースでは、売主側でどこまで境界を確定する必要があるかは取引条件によって変わります。
つまり「土地を売るなら必ず確定測量」という一律の判断ではなく、買主と売却方法によって必要性を考えることが重要です。
境界未確定だと売却価格は下がる?
境界が未確定だからといって、必ず一定額だけ価格が下がるというルールはありません。
ただし、買主が境界問題を引き継ぐことになる場合、そのリスクが価格交渉に影響する可能性があります。
たとえば、同じエリアに同程度の土地が二つあり、一方は確定測量済みで、もう一方は境界がわからず隣地所有者との確認もできていないとします。
価格が同じなら、買主は一般的に境界が明確な方を検討しやすくなります。
境界未確定の土地を選ぶのであれば、「測量費が必要になるかもしれない」「隣地との協議に時間がかかるかもしれない」という不確実性を価格に織り込もうとすることがあります。
だからといって、売主が先回りして大幅に値下げする必要はありません。
まず現在の状態で査定し、確定測量をした場合にどの程度売却条件が改善する可能性があるのかを比較することが重要です。
「測量してから査定」ではなく「査定してから測量判断」も考える
境界が不明だと、「まず測量を終わらせないと不動産会社に相談できない」と考える方がいます。
しかし、売却を目的とするのであれば、先に査定してもらう方法もあります。
現況のまま売った場合の価格と、境界を確定した場合に期待できる価格を比較するためです。
たとえば現況なら3,000万円程度、確定測量を行えば3,150万円程度の成約可能性があると仮定します。
測量に80万円必要なら、単純な価格差は150万円です。
150万円高く売るために80万円を使うのであれば、数字上は検討する余地があります。
しかし、測量に100万円以上かかり、売却価格への影響がほとんどないのであれば、現況のまま購入する買主を探した方が手取りを残せる場合があります。
もちろん実際の金額は土地条件によって異なります。
大切なのは「境界確定すれば高く売れる」というイメージだけで費用をかけず、売却後の手取りで比較することです。
隣地所有者の立会いが必要になることがある
境界確定を進める場合には、隣地所有者との確認が重要になります。
土地家屋調査士などが過去の資料や現地状況を調査し、境界と考えられる位置について隣地所有者と確認していきます。
ここで問題になりやすいのが、隣地所有者と連絡が取れないケースです。
たとえば隣地が空き家になっており、所有者が遠方に住んでいることがあります。
相続登記が長期間行われておらず、登記名義人がすでに亡くなっているケースも考えられます。
さらに、連絡は取れても「境界確認には協力したくない」と言われる場合もあります。
こうしたケースでは、通常より時間がかかる可能性があります。
売買契約を締結してから慌てて境界確認を始めるのではなく、境界に不安があるなら売却活動の早い段階で確認することが重要です。
隣地所有者と境界の認識が違う場合
より慎重な対応が必要なのが、隣地所有者と境界位置について意見が違うケースです。
売主が「この塀が境界です」と考えていても、隣地所有者が「その塀はあなたの土地側に建っているので、境界は別の場所です」と主張することがあります。
この状態で売主が一方的に境界を決めて売却することは避けるべきです。
過去の公図、地積測量図、境界確認書、現地の境界標などを確認し、土地家屋調査士など専門家へ相談します。
当事者同士だけで話し合うと感情的な問題に発展することもあります。
特に昔から隣家との関係が良くない場合には、売主本人が直接交渉を続けるより、専門家を通して客観的な資料を基に確認する方が進めやすい場合があります。
筆界特定制度という方法もある
隣地所有者との話し合いだけでは筆界を確認できない場合には、「筆界特定制度」を利用できる可能性があります。
法務局によると、筆界特定制度は、土地所有者などからの申請に基づき、筆界特定登記官が土地の筆界がどこに存在するのかを特定する制度です。
これは新しい筆界を作る制度ではありません。
登記された際にもともと定められていた筆界について、資料や現地調査などから位置を明らかにする仕組みです。
土地家屋調査士などの外部専門家である筆界調査委員が調査・測量などを行い、その意見を踏まえて筆界特定登記官が判断します。
大阪法務局では筆界特定手続について標準処理期間を9か月としています。
そのため、「来月までに売却したいので筆界特定を使えば間に合う」というものではありません。
境界問題が深刻な土地では、売却予定から逆算して早めに動くことが重要です。
筆界特定制度を使えば所有権争いもすべて解決する?
ここは誤解しやすい部分です。
筆界特定制度は、登記上の筆界を特定するための制度です。
隣地所有者との間で「この部分の所有権は自分にある」といった所有権そのものについて争いがある場合、筆界特定だけですべての問題が解決するとは限りません。
先ほど説明したように、筆界と所有権界は必ず一致するとは限らないからです。
したがって、境界問題が単純な位置確認なのか、所有権をめぐる争いにまで発展しているのかによって必要な対応が変わります。
所有権について紛争がある場合には、弁護士への相談が必要になることもあります。
スタッフ植松「境界問題では、『杭がないだけ』なのか『隣地と位置の認識が違う』のか『所有権まで争っている』のかを分けることが重要です。この三つでは対応の難しさがまったく違います。境界がわからないという言葉だけで判断せず、まず問題の種類を整理することが売却への近道です。」
大阪市では道路との境界にも注意する
土地の境界というと、左右や奥の隣家との境界だけを考えがちですが、道路側も重要です。
大阪市内では、住宅地の前面道路が市有地になっているケースがあります。
大阪市では、市有地に隣接する土地の所有者が境界確定を必要とする場合、境界確定協議の手続きが案内されています。
また、道路用地との境界については別途手続きが案内されています。
土地を売却するときには、民有地同士の境界だけでなく、道路との境界がどのような状態なのかも確認しておきましょう。
特に大阪市内の古い住宅地では、道路幅員、接道状況、セットバックなどが建て替え計画に影響するケースがあります。
境界位置が少し変わるだけでも、土地の有効面積や建築計画に影響する可能性があるため、道路側の確認も軽視できません。
ブロック塀があるから境界確定済みとは限らない
現地にブロック塀やフェンスがあると、「ここが境界だから問題ない」と思いやすいでしょう。
しかし、塀がどちらの所有物なのか、境界線上にあるのか、どちらか一方の土地内にあるのかは確認しなければ分かりません。
昔、隣地所有者同士が便宜的に設置した塀が、実際の筆界とずれている可能性もあります。
また、塀の中心を境界としているケースもあれば、塀全体が一方の所有地内に設置されているケースもあります。
土地売却では見た目だけで判断せず、過去の資料や境界標などを確認することが重要です。
越境が見つかったら土地は売れない?
測量や現地確認をした結果、屋根、雨樋、ブロック塀、配管、樹木などが境界を越えていることが判明する場合があります。
越境があるからといって、必ず売却できなくなるわけではありません。
重要なのは、何がどちら側へどの程度越境しているのかを把握し、買主へ説明できる状態にすることです。
たとえば隣地建物の一部が自分の土地へ越境している場合、将来建て替える際にどのように対応するのかについて隣地所有者との間で確認書を作成する方法などが検討されることがあります。
一方、売主側の建物や塀が隣地へ越境している場合には、買主がその問題を引き継ぐことになるため、売買条件に影響する可能性があります。
越境が判明したときに最も避けたいのは、その事実を把握しながら買主へ説明せず売却することです。
問題があるなら、どのような状態なのかを整理したうえで売却方法を考えます。
土地面積が登記簿と実測で違うこともある
古い土地では、登記簿に記載されている地積と実際に測量した面積が一致しないことがあります。
たとえば登記簿では100㎡となっていても、実測すると98㎡だったということがあります。
反対に、実測面積の方が大きい場合もあります。
このような土地を売却するときには、売買価格を登記簿面積で決めるのか、実測面積で精算するのかを契約条件として整理する必要があります。
特に坪単価や㎡単価が高いエリアでは、数㎡の差でも価格への影響が大きくなる可能性があります。
買主が建築を目的としているなら、実際に利用できる面積が重要になるため、面積差について慎重に確認されるでしょう。
公簿売買と実測売買の違い
土地売買では、登記簿に記載された面積を基準に価格を決め、後から実測面積との差が分かっても代金を精算しない方法があります。
一方、実測した面積を基準として売買代金を決めたり、契約時には登記簿面積を使い、引渡しまでに実測して差額を精算したりする方法もあります。
どの方法を採用するかは、土地の状況や売買条件によって異なります。
境界が未確定の土地では、そもそも正確な実測面積を確定しにくい場合があります。
そのため、どの面積を基準として売買するのかを契約書で明確にすることが重要です。
「100㎡だと思って買ったのに実際は95㎡しかなかった」という認識違いを防ぐためにも、面積と境界について買主へどのように説明するかを売却前に整理しておきましょう。
境界未確定のまま売る場合に重要なこと
境界未確定の状態で売却する場合、売主と買主の認識を合わせることが非常に重要です。
どの境界が確認できているのか、どこが未確認なのか、境界標はあるのか、測量図はあるのか、隣地所有者との間で何か問題が起きているのかを整理します。
単に契約書へ「現況有姿」と書けば、すべての問題を気にせず売れるということではありません。
買主が判断するために重要な事実は、適切に説明する必要があります。
また、買主が住宅ローンや事業融資を利用する場合には、金融機関や保証会社が土地の状況を確認することがあります。
売主と買主が合意していても、融資上の理由から境界確認を求められる可能性もあります。
そのため、購入希望者が現れてから初めて問題を確認するのではなく、販売開始前に境界状況を整理しておく方が安全です。
境界未確定でも買取なら売却できることがある
一般の個人買主が新築住宅を建てるために土地を購入する場合、境界未確定を大きなリスクと感じることがあります。
一方、不動産買取事業者や建築・開発に慣れた事業者であれば、境界未確定の状態を理解したうえで購入を検討することがあります。
事業者側で測量や隣地協議を行うことを前提として価格を提示するケースも考えられます。
そのため、隣地所有者と連絡が取れない、測量に時間がかかる、相続後すぐ現金化したいといった事情があるなら、現況のまま売却できる可能性も確認するとよいでしょう。
ただし、事業者が将来負担する測量費や境界リスクなどを価格へ織り込むため、確定測量済みの土地より価格が低くなる可能性があります。
ここでも大切なのは手取り比較です。
測量費をかけるか、価格を下げて売るか
境界未確定の土地では、「自分で測量してから売る」方法と「買主に境界問題を引き継いでもらい、その分を価格へ反映する」方法を比較できます。
たとえば、
現況売却価格 2,800万円
確定測量後の想定価格 3,000万円
測量関連費用 70万円
と仮定します。
単純化すれば、測量後に売ることで200万円価格が上がり、70万円の費用がかかるため、差は130万円です。
この条件なら測量を検討する意味があります。
一方、
現況売却価格 2,900万円
確定測量後の想定価格 3,000万円
測量関連費用 100万円
なら、価格差と費用がほぼ同じです。
さらに測量に半年かかるなら、その間の固定資産税や管理負担、相場変動なども考える必要があります。
境界を確定すること自体には価値がありますが、売却を目的とするなら「いくら高く売れるか」ではなく、費用と時間を差し引いて最終的にいくら残るかで判断することが重要です。
測量費は譲渡費用になる場合がある
土地売却のために測量を行った場合、その測量費は税務上の譲渡費用に該当することがあります。
国税庁は、土地や建物の譲渡所得について、売却代金から取得費と譲渡費用を差し引いて計算すると案内しており、売却するために直接かかった測量費は譲渡費用の例として挙げられています。
たとえば土地を4,000万円で売却し、売却のために80万円の測量費を支払った場合、その80万円が譲渡費用として認められる条件を満たせば、譲渡所得の計算上差し引ける可能性があります。
ただし、すべての測量費が自動的に譲渡費用になるという意味ではありません。
いつ、何の目的で支出した費用なのかによって扱いが変わる可能性があるため、具体的な税務処理については税理士や税務署へ確認しましょう。
領収書や請求書なども保管しておくことが重要です。
相続した土地ほど境界確認を早めに行う
境界問題が発生しやすいのが相続した土地です。
相続人自身がその土地に住んだことがなく、隣地所有者との関係も分からないことがあります。
親から「境界はこの塀だった」と聞いていたとしても、正式な資料が残っていない場合があります。
さらに相続から時間が経つと、隣地側でも相続が発生し、当時の事情を知っている人がいなくなる可能性があります。
境界確認は、時間が経てば自然に解決する問題ではありません。
むしろ当時の事情を知る所有者がいなくなることで、確認が難しくなることがあります。
相続した土地を将来売却する可能性があるなら、すぐ売らない場合でも境界標や測量資料の有無を一度確認しておくとよいでしょう。
古家付き土地では建物と境界を一緒に確認する
古家付き土地を売却する場合、境界問題と建物の問題が重なることがあります。
建物の軒、雨樋、室外機、配管などが隣地へ越境している可能性があるからです。
また、古い住宅地では建物と境界線との距離が非常に近く、解体工事を行う際に隣地との調整が必要になるケースもあります。
そのため、「古家を解体して更地にしてから売れば境界問題も簡単になる」とは限りません。
解体前に境界位置を確認しないと、どこまで工事してよいのか判断しにくい場合もあります。
売却前に解体するか迷っているなら、境界状況も含めて判断することが重要です。
狭小地や旗竿地では境界位置の影響が大きい
大阪市内には、間口が狭い土地や旗竿地、変形地などもあります。
こうした土地では、境界位置が数十センチ変わるだけでも建築計画へ影響する可能性があります。
特に接道部分が狭い土地では、道路に接している幅が建築基準法上の接道要件を満たすかどうかが重要です。
「昔から家が建っていたから次も建てられる」とは限りません。
土地を購入する人が建て替えを前提としている場合には、境界位置、接道、道路種別などをまとめて確認します。
境界問題を単独で見るのではなく、「この土地にどのような建物を建てられるのか」という利用価値まで含めて考えることが、売却価格を判断するうえでも重要です。
隣地所有者へ突然「ハンコをください」と頼まない
境界確定では隣地所有者との関係も大切です。
売却を急いでいるからといって、突然訪問して「ここが境界なので署名してください」と迫れば、相手が警戒する可能性があります。
隣地所有者からすると、自分の土地面積にも関係する話です。
「土地を売るから急いでいる」という売主側の事情だけで進めることはできません。
土地家屋調査士などから測量の目的、過去の資料、現地状況を説明してもらい、客観的に確認していく方が進めやすいことがあります。
隣地との関係を悪化させてしまうと、結果的に売却が遅れる可能性もあります。
境界確認は単なる事務手続きではなく、隣地所有者との調整を伴う作業だと理解しておきましょう。
境界確定に時間がかかる前提で売却計画を立てる
境界確定は、土地家屋調査士へ依頼した翌日に完了するような手続きではありません。
資料調査、現地測量、隣接地所有者への連絡、立会い、必要に応じて行政との協議などが行われます。
隣地所有者が遠方に住んでいる場合や相続が発生している場合には、さらに時間がかかることがあります。
したがって、「3か月後までに土地を現金化したい」という事情があるなら、最初にその期限を伝えておくことが重要です。
確定測量を終えて一般の買主へ売却する方法だけでなく、現況のまま購入する事業者へ売却する方法なども比較します。
時間も売却条件の一つとして考えましょう。
売買契約を先に結んでから測量する方法もある
土地売買では、確定測量がすべて終了してから買主を探す方法だけではありません。
売買契約を締結したうえで、引渡しまでに売主が境界を明示することなどを条件とする取引もあります。
この方法なら、買主を確保してから測量を進められる場合があります。
ただし、予定どおり境界確認が完了しなかった場合にどうするのかを契約条件として明確にする必要があります。
「隣地所有者が立ち会ってくれなかった」「予定日までに確定できなかった」という場合に契約をどう扱うのかが曖昧だと、トラブルになる可能性があります。
境界に不確定要素がある土地ほど、売買契約の条件設定が重要です。
買主へ伝えるべき境界情報を整理する
境界未確定の土地を売却する場合には、買主へ何を伝えるべきかを整理しておきます。
境界標がある場所とない場所、過去の測量図の有無、隣地所有者との協議状況、越境物の有無などです。
過去に隣地所有者との間で境界について話し合った記録や覚書があるなら、それも確認します。
買主にとって怖いのは「境界が未確定であること」だけではありません。
購入後に、売主が知っていた問題が新たに判明することです。
売却前から情報を整理し、分かっていることと分からないことを区別して説明することで、買主もリスクを判断しやすくなります。
スタッフ植松「境界未確定の土地を売るときに大切なのは、問題を隠して“普通の土地”として見せることではありません。私は、分かっていることと分からないことを最初から整理した方が、結果的に売却を進めやすいと考えています。境界標がない、隣地確認が未了、越境の可能性があるなど、現状を整理したうえで、その条件を理解できる買主を探すことが重要です。」
境界未確定の土地を売る前に確認したい順番
境界に不安がある土地では、いきなり大きな費用をかけるのではなく、順番に確認していくことが重要です。
最初に手元の資料を探します。
売買契約書、重要事項説明書、測量図、境界確認書、覚書などです。
次に法務局で登記事項証明書、公図、地積測量図などを確認します。
そのうえで現地を見て、境界標、塀、フェンス、越境物などを確認します。
ここまで整理した段階で、土地家屋調査士などへ相談すると、どの程度の測量や境界確認が必要なのか判断しやすくなります。
同時に不動産としての査定も行います。
現況のまま売る場合と、境界を確定してから売る場合の価格差を把握するためです。
そして、測量費、必要期間、価格改善の可能性を比較して、売却方法を決めます。
この順番なら、「売るためには測量が絶対必要だと思って100万円近く使ったものの、売却価格がほとんど変わらなかった」という事態を避けやすくなります。
境界を確定してから売るメリット
境界を確定して売却する最大のメリットは、買主が土地の範囲を理解しやすくなることです。
新築住宅を建てる買主なら、敷地形状や面積を基に建築計画を検討しやすくなります。
また、隣地所有者との境界確認が済んでいれば、購入後に境界トラブルへ巻き込まれる不安も軽減できます。
結果として、一般の個人買主や建築会社など幅広い購入者が検討しやすくなる可能性があります。
ただし、境界確定には費用と時間が必要です。
その費用をかけることで売却価格や売却しやすさがどの程度改善するのかを確認したうえで実施することが大切です。
境界未確定のまま売るメリット
現況のまま売却する最大のメリットは、測量に必要な費用と時間を売主側で負担せずに済む可能性があることです。
特に、相続した土地を早く現金化したい場合や、隣地所有者との調整に長期間かかりそうな場合には選択肢になります。
また、不動産事業者などが購入後に自社の計画に合わせて測量・開発を進めるのであれば、売主側で先にすべて確定する必要がないケースもあります。
一方で、購入できる人が限定されたり、境界リスクを価格へ反映されたりする可能性があります。
そのため「測量費が不要だから得」と単純に考えるのではなく、現況売却価格との比較が必要です。
「一番高い売却価格」より「一番多く残る方法」を考える
土地売却では、売却価格だけを見ると判断を誤ることがあります。
たとえば確定測量後なら3,500万円、現況なら3,350万円という査定だったとします。
一見すると、測量後に売る方が150万円高くなります。
しかし、測量関連費用が100万円かかり、境界確定まで半年必要ならどうでしょうか。
価格差だけを見れば150万円ですが、実質的な差は小さくなります。
さらに半年間の固定資産税や草刈りなどの管理費、市況変化もあります。
反対に、測量費70万円で売却価格が300万円改善し、購入希望者も増えるのであれば、測量してから売る価値は高くなります。
つまり重要なのは、
「いくらで売れるか」
ではなく、
「売却するために必要な費用と時間を差し引いた後、いくら残るか」
です。
境界がわからない土地は「調べてから売る」ではなく「調べながら売り方を決める」
境界がわからない土地を所有していると、「全部きれいに解決してからでなければ売却できない」と考えてしまいがちです。
しかし、実際には土地の状況によって必要な対応は異なります。
境界標がないだけで、過去の確定測量図や境界確認書が残っている土地もあります。
資料はないものの、隣地所有者との間で境界位置について争いがない土地もあります。
一方で、隣地所有者と境界位置について意見が異なり、簡単には確定できない土地もあります。
さらに、道路との境界確認が必要なケースや、越境物が見つかるケースもあります。
これらをすべて「境界未確定だから売れない」と扱う必要はありません。
まず、現在の状態を整理します。
手元の売買契約書や測量図を探し、法務局の資料を確認し、現地で境界標や塀の状態を見ます。
次に、必要であれば土地家屋調査士へ相談します。
その段階で、「確定測量が必要なのか」「現況測量で状況を把握すればよいのか」「隣地との協議が必要なのか」が見えてきます。
そして同時に、不動産としての価格を確認します。
ここが重要です。
測量が必要かどうかだけを先に決めるのではなく、現況で売った場合の価格と、境界を確定してから売った場合の価格を比較します。
土地の場所や購入者層によっては、境界を確定することで一般の買主が検討しやすくなり、売却条件が改善する可能性があります。
一方、不動産事業者が現況のまま購入できる土地なら、売主が時間と費用をかけて境界を確定するより、そのまま売却した方が手取りやスピードの面で有利になる場合があります。
特に大阪市内では、土地の利用価値を考える際に境界だけでなく、接道、道路幅員、用途地域、建ぺい率、容積率なども重要になります。
境界を確定して100㎡あることが分かっても、その土地にどの程度の建物を建てられるかによって買主の評価は変わります。
反対に、境界が完全には確定していなくても、駅に近く、土地利用の可能性が高い場所なら、現況を理解したうえで購入を検討する事業者が現れる可能性があります。
だからこそ、境界問題だけを切り離して考えないことが重要です。
「境界を確定すること」そのものを目的にするのではなく、「土地をより良い条件で売却するために、どこまで境界を整理する必要があるのか」という視点で考えます。
また、境界問題は時間がかかる可能性があります。
隣地所有者とすぐ連絡が取れれば比較的スムーズに進むことがありますが、所有者が遠方に住んでいる、相続が発生している、境界位置について意見が異なるといった事情があれば、予定どおり進まないこともあります。
売却期限が決まっている場合には、特に早めの確認が必要です。
「半年後までに相続した土地を現金化したい」という事情があるなら、確定測量だけを前提にせず、現況売却も含めて複数の方法を比較します。
また、測量費についても見積もりを確認しましょう。
土地の広さだけでなく、隣接地の数、道路との境界、過去の資料の有無などによって必要な作業が変わるためです。
そして、測量費を支払う場合には、売却価格がどの程度改善する可能性があるのかを考えます。
100万円の測量費をかけて200万円以上手取りが増える可能性があるなら検討する意味があります。
反対に、100万円かけても売却価格がほとんど変わらず、半年以上時間が必要なら、現況売却の方が自分の目的に合うこともあります。
境界未確定の土地を売却するときに大切なのは、「境界が確定していないから売れない」と最初から諦めないことです。
同時に、「とりあえず測量すれば解決する」と決めつけないことも重要です。
資料を確認する、現地を確認する、専門家へ相談する、現況査定と測量後の価格を比較する。そのうえで、費用・時間・手取りを見ながら売却方法を決める。
この順番で考えれば、境界がわからない土地でも現実的な売却方法を検討しやすくなります。
特に相続した土地、古家付き土地、長期間保有している土地では、所有者自身が境界について詳しく知らないことは珍しくありません。
「自分が境界を知らない」ということと、「土地を売却できない」ということは同じではありません。
まず現在どこまで確認できているのかを整理し、その土地にとって本当に必要な対応を見極めることが、余計な費用を抑えながら売却を進めるための第一歩になります。
