海外赴任や海外移住をしたあと、日本に残しているマンションや戸建て、土地を売却したいと考える方は少なくありません。
「海外に住んでいても日本の不動産は売れる?」
「日本に帰国しないと売買契約はできない?」
「非居住者になると税金は変わる?」
「売却代金から10%以上差し引かれると聞いたけれど本当?」
こうした疑問を持っている方も多いのではないでしょうか。
結論からいうと、海外在住でも日本国内の不動産を売却することは可能です。
大阪市内のマンションや戸建てはもちろん、豊中市・吹田市・箕面市など北摂エリアに所有している不動産についても、海外から売却手続きを進められるケースがあります。
ただし、国内に住んでいる人の売却とは異なり、海外在住者が「非居住者」に該当する場合には、税務や登記の手続きで特有のルールがあります。
特に注意したいのが、不動産の売却代金に対する「10.21%の源泉徴収」です。
条件に該当すると、買主が売買代金の全額を売主へ支払うのではなく、売却代金の10.21%を源泉徴収したうえで、残額を売主へ支払います。
たとえば5,000万円で不動産を売却した場合、条件によっては510万5,000円が源泉徴収され、売主が決済時に受け取る金額が大きく減ることがあります。
もっとも、この10.21%は「最終的な税率が10.21%になる」という意味ではありません。
実際の譲渡所得を計算して確定申告を行い、本来納付すべき所得税額と精算する仕組みです。
そのため、源泉徴収された金額が最終的な税額より多ければ、確定申告によって還付を受けられる場合があります。
海外在住者の不動産売却では、この仕組みを知らずに売却を進めると、「決済日に想定より入金額が少ない」「確定申告が必要だと後から知った」といった事態になりかねません。
そこでこの記事では、海外在住者が日本の不動産を売却する方法、非居住者の税金、10.21%の源泉徴収、確定申告、納税管理人、必要書類、売却時の注意点まで詳しく解説します。
海外在住でも日本の不動産は売却できる
海外在住だからといって、日本国内の不動産を所有できなくなったり、売却できなくなったりするわけではありません。
日本国内にある、
- マンション
- 一戸建て
- 土地
- 投資用不動産
- 一棟マンション・アパート
- ビル
- 店舗・事務所
なども、海外から売却を進めることができます。
重要なのは、「海外に住んでいる」という事実よりも、日本の税法上で「居住者」と「非居住者」のどちらに該当するかです。
海外在住者の不動産売却では、この区分によって税務上の手続きが変わります。
海外在住でも必ず非居住者になるとは限らない
税法上の「非居住者」は、単純に海外にいる人すべてを指す言葉ではありません。
一般的には、日本国内に住所がなく、かつ現在まで引き続き1年以上日本国内に居所がない個人が非居住者に該当します。
たとえば会社員が1年以上の予定で海外支店へ赴任するケースでは、一般的に日本国内に住所を有しない者と推定され、非居住者になることがあります。
一方、数か月程度の短期出張などで生活の本拠が日本に残っている場合には、海外に滞在していても必ず非居住者になるわけではありません。
実際の判定は生活の本拠や滞在予定などによって異なるため、判断が難しいケースでは税務署や税理士などへの確認が必要です。
この記事では、主に日本の税法上の「非居住者」となった方が日本国内の不動産を売却するケースを中心に解説します。
非居住者が日本の不動産を売ると日本で税金がかかる
海外に移住すると、
「もう日本に住んでいないのだから、日本では税金がかからないのでは?」
と考える方もいるかもしれません。
しかし、日本国内にある不動産の売却によって生じた所得は「国内源泉所得」に該当します。
そのため、非居住者であっても日本国内の不動産を売却して利益が発生すれば、原則として日本で所得税の課税対象となります。
居住国だけで税金を処理すればよいわけではない点に注意しましょう。
売却価格そのものに税金がかかるわけではない
不動産を5,000万円で売ったからといって、5,000万円全額が所得になるわけではありません。
原則として、税金は「譲渡所得」に対して計算します。
基本的な考え方は次のとおりです。
譲渡所得=売却価格-取得費-譲渡費用-適用できる特別控除
取得費とは、その不動産を購入したときの代金や購入に要した一定の費用などです。
建物については、所有期間中の減価償却相当額を差し引いて取得費を計算します。
譲渡費用には、売却のために直接かかった仲介手数料などが該当する場合があります。
つまり、
「いくらで売れたか」
だけでは税額は分かりません。
「いくらで取得したのか」
「売却時にどれだけ費用がかかったのか」
まで確認する必要があります。
海外赴任が長くなっている方ほど、購入時の売買契約書や領収書が日本の実家や倉庫などに保管されたままになっているケースがあります。
売却を検討し始めたら、購入時の資料が残っているか早めに確認しておくことをおすすめします。
スタッフ植松海外から不動産を売る場合、私は“価格を調べること”と同じくらい“購入時の書類を探すこと”が重要だと考えています。取得費が確認できるかどうかは、その後の税金計算にも関わるからです。
海外在住者の不動産売却で重要な「10.21%の源泉徴収」とは
非居住者の不動産売却で、特に理解しておきたいのが源泉徴収です。
非居住者が日本国内にある土地や建物などを売却した場合、原則として、買主は売主へ売買代金を支払う際に「10.21%」の所得税・復興特別所得税を源泉徴収します。
つまり、売買契約書に記載された売買代金がそのまま全額振り込まれるとは限りません。
5,000万円で売却した場合のイメージ
仮に売却価格が5,000万円だったとします。
源泉徴収が必要な取引では、
5,000万円×10.21%=510万5,000円
が源泉徴収される計算になります。
単純化すると、
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 売却価格 | 5,000万円 |
| 10.21%の源泉徴収額 | 510万5,000円 |
| 売主への支払額 | 4,489万5,000円 |
となります。
実際の決済では固定資産税等の精算金、住宅ローンの返済、仲介手数料なども関係するため、手取り額はさらに異なります。
しかし、海外在住の売主にとって重要なのは「売却価格の約1割が決済時に源泉徴収される可能性がある」という点です。
源泉徴収された10.21%は最終的な税額ではない
ここは非常に誤解されやすいポイントです。
「非居住者が不動産を売ると、売却価格の10.21%が税金になる」
という意味ではありません。
10.21%は、買主が売買代金を支払う際にあらかじめ徴収する税金です。
その後、売主が確定申告を行い、実際の譲渡所得に基づいて所得税を計算します。
すでに源泉徴収された税額は、その確定した所得税額から精算されます。
源泉徴収された金額より、本来納める所得税が少なければ還付を受けられる場合があります。
逆に、本来納める所得税のほうが多ければ、追加納税が必要になることもあります。
そのため、源泉徴収された時点で税務処理がすべて終了するわけではありません。
10.21%の源泉徴収が不要になるケースもある
非居住者から日本国内の不動産を購入した場合でも、すべての取引で10.21%の源泉徴収が必要になるわけではありません。
一定の条件を満たす場合には、源泉徴収が不要になります。
主な条件は、
- 売買代金が1億円以下である
- 買主が個人である
- 買主本人またはその親族が居住するために購入する
というものです。
この条件を満たす場合には、買主による10.21%の源泉徴収は原則として必要ありません。
「1億円以下なら源泉徴収されない」は間違い
ここも注意したいポイントです。
売却価格が1億円以下であるだけでは、源泉徴収不要にはなりません。
たとえば、
法人が購入する場合
投資目的で個人が購入する場合
賃貸に出す目的で購入する場合
などでは、売買代金が1億円以下であっても源泉徴収が必要になる可能性があります。
「誰が何の目的で購入するのか」が重要です。
特に大阪市内の区分マンションや一棟収益物件、ビルなどは、法人や投資家が買主になることがあります。
海外在住の所有者が投資用不動産を売却する場合には、源泉徴収が発生する可能性を資金計画に入れておく必要があります。
非居住者でも不動産売却後に確定申告が必要
非居住者が日本国内の不動産を売却して譲渡所得が生じた場合、原則として日本で確定申告が必要です。
国税庁も、海外勤務中の非居住者が国内不動産を売却した場合、不動産の売却所得は譲渡所得となり、原則として確定申告が必要としています。
「海外に住んでいるから日本では確定申告できない」ということではありません。
確定申告の時期
原則として、不動産を売却した年の翌年に確定申告を行います。
通常は翌年2月16日から3月15日までが申告期間です。
期限が土日祝日などに当たる場合には取り扱いが変わることがありますので、その年の申告期限を確認しましょう。
確定申告で源泉徴収税額を精算する
たとえば、売却時に500万円以上源泉徴収されていても、譲渡所得から計算した本来の所得税が300万円だった場合には、一定の手続きを行うことで差額が還付される可能性があります。
反対に、本来の税額が源泉徴収額より多い場合には不足分を納付します。
そのため、非居住者の不動産売却では、
「売却する」
だけではなく、
「翌年の確定申告まで行う」
ところまでを一連の手続きとして考える必要があります。
非居住者の譲渡所得はどう計算する?
不動産売却の譲渡所得については、非居住者であっても基本的な計算方法は居住者と同様です。
譲渡所得は、次のように計算します。
譲渡所得=譲渡価額-取得費-譲渡費用-特別控除額
それぞれの項目を確認してみましょう。
譲渡価額
不動産を売却して受け取る金額です。
一般的には売買契約書に記載されている売買代金が基本になります。
取得費
取得費とは、不動産を購入したときにかかった一定の費用です。
代表的なものとして、
- 土地・建物の購入代金
- 購入時の仲介手数料
- 一定の登記費用
- 一定の税金
- 改良費・設備費
などがあります。
ただし、建物については購入金額をそのまま取得費にできるわけではなく、所有期間中の減価償却費相当額を差し引きます。
購入時の契約書が見つからない場合
長年所有している物件では、購入時の売買契約書が見つからないことがあります。
取得費が分からない場合、原則として売却価格の5%を概算取得費として計算する方法があります。
しかし、実際には高額で購入した不動産でも取得費が売却価格の5%しか認められないことになれば、譲渡所得が大きくなり、税負担が増える可能性があります。
そのため、購入時の資料はできるだけ探すことが重要です。
売買契約書だけでなく、当時の領収書や住宅ローン関係資料など、取得価格を確認する手掛かりが残っていないか確認してみましょう。
譲渡費用
譲渡費用とは、不動産を売却するために直接かかった費用です。
たとえば、
- 売却時の仲介手数料
- 売主負担の印紙税
- 売却するために行った一定の建物解体費
- 売却のために支払った一定の立退料
などが該当する場合があります。
一方、修繕費や固定資産税など、所有期間中の維持管理費がすべて譲渡費用になるわけではありません。
税務上の扱いは個別事情によって異なるため、高額な費用がある場合は確認しておきましょう。
所有期間によって税率が変わる
不動産の譲渡所得は、所有期間によって「長期譲渡所得」と「短期譲渡所得」に分かれます。
判断基準となるのは単純な保有年数ではなく、「売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えているか」です。
長期譲渡所得
売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えている場合です。
短期譲渡所得
売却した年の1月1日時点で所有期間が5年以下の場合です。
短期譲渡所得は長期譲渡所得より所得税率が高く設定されているため、取得時期と売却時期によって税負担が変わる可能性があります。
特に購入から5年前後の物件を売却する場合には、「あと数か月待てば長期になる」とは限らないので注意しましょう。
判定日は売却日から5年前ではなく、売却年の1月1日だからです。
海外在住者の確定申告で重要な「納税管理人」とは
非居住者の不動産売却では、「納税管理人」という言葉を初めて聞く方も多いでしょう。
納税管理人とは、日本国内で非居住者本人に代わって税務関係の手続きを行う人です。
非居住者が確定申告書の提出など、日本国内で国税に関する手続きを行う必要がある場合には、納税管理人を定める必要があります。
国税庁では、確定申告書を提出するときまでにあらかじめ納税管理人を定め、「所得税・消費税の納税管理人の届出書」を所轄税務署へ提出する必要があるとしています。
納税管理人になれる人
納税管理人は個人でも法人でも構いません。
たとえば、
- 日本国内に住む家族や親族
- 税理士
- 国内法人
などが納税管理人になることがあります。
税務署から発送される書類は、納税管理人を選任した後は納税管理人宛てに送付されます。
海外在住者にとっては、日本国内で税務手続きを進めるための窓口となる存在です。
不動産会社と納税管理人は役割が違う
ここは混同しないようにしましょう。
不動産会社は、不動産の査定、販売活動、買主との条件調整、売買契約、引き渡しなど売却手続きをサポートします。
一方、納税管理人は税務に関する役割を担います。
さらに、登記手続きについては司法書士が関与するケースが一般的です。
海外から不動産を売却するときは、
不動産売却=不動産会社
登記=司法書士
税務=税理士・納税管理人等
というように、必要に応じてそれぞれの専門家が連携して進めることになります。
スタッフ植松海外在住者の売却では、“誰に何をお願いするのか”を最初に整理しておくと手続きがかなり分かりやすくなります。売却・登記・税務を一つの作業だと思わないことがポイントです。
海外在住者が不動産を売るときの必要書類
海外在住者の不動産売却では、日本国内に住んでいる売主とは必要書類が異なる場合があります。
特に日本の住民登録を抹消している場合には、住民票や印鑑証明書を通常どおり取得できません。
そのため、海外居住者向けの証明書を準備する必要があります。
物件や登記状況、国籍、居住国などによって必要書類は変わりますが、一般的には次のような書類を確認します。
| 書類 | 主な目的 |
| 登記識別情報・権利証 | 不動産の権利確認 |
| 本人確認書類 | 本人確認 |
| 在留証明等 | 海外住所の証明 |
| 署名証明等 | 印鑑証明書に代わる本人確認 |
| 固定資産税関係書類 | 税額・物件情報の確認 |
| 購入時の売買契約書 | 取得費などの確認 |
| 管理規約等 | マンション売却時など |
| 委任状 | 国内の代理人等へ依頼する場合 |
実際に必要な書類は、司法書士などへ事前に確認してください。
在留証明
海外に居住している日本人の場合、在留証明が住所証明として利用されることがあります。
在留証明とは、海外のどこに住所を有しているか、または有していたかを、その地域を管轄する日本大使館や総領事館などの在外公館が証明するものです。
日本に住民登録がない海外在住者が、日本国内の不動産登記などで住所証明を求められた場合に使用されます。
申請には旅券のほか、現地住所を確認できる書類などが必要になることがあります。
署名証明
海外へ転出して日本の住民登録を抹消すると、原則として印鑑登録も利用できなくなります。
そのため、日本国内の不動産売却で印鑑証明書に代わる書類が必要になる場合には、「署名証明」を利用することがあります。
署名証明は、日本の在外公館が本人の署名が本人によって行われたことを証明する書類です。
不動産登記でも、海外に居住していて印鑑証明書を取得できない場合には、日本の領事が作成した署名証明を印鑑証明書に代わる書面として利用できる取り扱いがあります。
パスポートなどの本人確認書類
本人確認のため、パスポートなどを求められるのが一般的です。
不動産売却では犯罪収益移転防止法に基づく本人確認なども必要になるため、海外居住者の場合は通常より確認に時間がかかることもあります。
登記識別情報または権利証
不動産を取得したときに交付された登記識別情報や、古い不動産であれば登記済証、いわゆる権利証を確認します。
海外赴任前に日本の自宅や貸金庫などへ保管したままになっているケースも多いため、早めに所在を確認しましょう。
紛失していても売却が絶対にできないわけではありませんが、司法書士による本人確認情報の作成など、別の手続きが必要になる場合があります。
固定資産税納税通知書など
固定資産税や都市計画税の確認、物件情報の確認などのために使用します。
海外転出後も国内の親族宅などへ届くようにしている場合は、保管されているか確認しておきましょう。
購入時の売買契約書・領収書
税金を計算するうえで重要な資料です。
購入価格や購入時の費用を確認できるため、確定申告で取得費を計算する際に役立ちます。
売却を検討する段階で探しておくことをおすすめします。
海外から売買契約を進めることはできる?
海外在住者が不動産を売却する場合、
「契約のためだけに日本へ帰らなければならないのか」
という点も気になるでしょう。
売却方法や本人確認の方法などによって異なりますが、必ずしもすべての手続きで本人が日本へ帰国しなければならないとは限りません。
代理人を立てたり、郵送等を利用したりして売却を進められるケースがあります。
ただし、不動産取引は高額な財産を扱うため、本人確認や意思確認が非常に重要です。
特に所有権移転登記を担当する司法書士は、売主本人の売却意思などを確認する必要があります。
海外から手続きを進める場合は、国内居住者の売却より準備期間を長めに見ておいたほうがよいでしょう。
代理人を立てて不動産を売却する方法
海外居住者本人が頻繁に帰国できない場合には、日本国内にいる家族などを代理人として手続きを進める方法があります。
代理人へ一定の手続きを任せる場合には委任状を作成します。
ただし、委任する内容は慎重に決める必要があります。
不動産売却では、
- 売却価格
- 契約条件
- 手付金
- 引き渡し日
- 契約不適合責任
- 設備の扱い
など、売主の判断が必要な事項が数多くあります。
何でも代理人に判断してもらうのではなく、「どこまで代理権を与えるか」を整理しておくことが重要です。
また、委任状に署名証明などが必要になることもあるため、書類を作成する前に司法書士などへ確認しておきましょう。
海外から不動産を売却する基本的な流れ
海外在住者の不動産売却は、一般的に次のような流れで進めます。
不動産の現状と登記名義を確認する
まず確認したいのが、現在の登記名義です。
購入した本人名義になっていれば比較的分かりやすいですが、相続した不動産の場合には亡くなった親名義のままになっているケースがあります。
相続登記が完了していなければ、原則として売却前に相続登記が必要です。
また、登記上の住所が海外転出前の住所になっている場合などは、売却に伴って住所変更登記などが必要になることがあります。
現在の売却価格を査定する
次に、不動産の現在価値を確認します。
査定では、
- 物件の所在地
- 築年数
- 土地・建物面積
- マンションの階数・向き
- 建物状態
- 周辺成約事例
- 土地の接道状況
- 市場動向
などを確認します。
大阪市北区、中央区、西区、福島区などのマンションでは同じ築年数でも駅距離や階数、眺望などによって価格差が出ます。
豊中市・吹田市・箕面市など北摂の戸建てや土地であれば、駅距離だけでなく土地面積、道路条件、学校区、周辺環境なども価格に影響します。
海外にいると日本の不動産価格の変化を実感しにくいため、「購入したときの価格」や「海外転出したときの価格」を基準に考えないことが大切です。
現在の市場価格を確認したうえで売却判断をしましょう。
必要書類を確認する
査定と並行して、海外在住者向けに必要な書類を確認します。
特に在留証明や署名証明は取得に手続きが必要です。
居住している国・地域の日本大使館や総領事館まで移動しなければならないケースもあるため、決済直前になって初めて準備するのはおすすめできません。
司法書士に、
「どの書類が必要か」
「どの形式の署名証明が必要か」
「有効期限はあるか」
などを先に確認してから取得しましょう。
売却活動を開始する
価格や売却条件を決めたら購入希望者を探します。
所有者が海外にいる場合でも、日本国内にある不動産の内覧自体は対応できます。
空室物件であれば、鍵を国内で管理することで購入希望者へ案内できるケースがあります。
賃貸中の投資物件であれば、オーナーチェンジ物件として売却するケースもあります。
買主が決まったら源泉徴収の有無を確認する
海外在住者の売却では、このタイミングが重要です。
売主が非居住者に該当する場合には、
- 売買価格
- 買主が個人か法人か
- 買主の購入目的
などを確認し、10.21%の源泉徴収が必要な取引なのかを整理します。
源泉徴収がある場合には決済時の入金額が変わるため、住宅ローンの残債がある人は特に注意してください。
売買契約を締結する
売却条件について合意したら売買契約を締結します。
本人が帰国できない場合には、契約方法や委任手続きなどを事前に調整します。
海外との書類のやり取りには国内より時間がかかるため、契約日・決済日を余裕のあるスケジュールに設定することが大切です。
残代金決済・所有権移転
決済日に買主から残代金が支払われ、所有権移転登記を行います。
源泉徴収が必要な場合には、買主が源泉徴収分を差し引いて売主へ支払います。
売主に住宅ローンが残っている場合には、売却代金などによってローンを完済し、抵当権の抹消手続きも行います。
翌年に確定申告を行う
不動産の引き渡しが終わっても、税務手続きが残っています。
翌年に譲渡所得の確定申告を行い、源泉徴収された所得税との精算を行います。
海外在住者の不動産売却では、「引き渡し完了=すべて終了」と考えないようにしましょう。
住宅ローンが残っていても海外から売却できる?
住宅ローンが残っている物件でも売却を検討することはできます。
ただし、原則として物件の引き渡しまでに住宅ローンを完済し、金融機関が設定している抵当権を抹消する必要があります。
通常は売却代金を住宅ローン返済に充てます。
たとえば、
売却価格5,000万円
住宅ローン残高3,000万円
であれば、売却代金からローンを完済できる可能性があります。
一方、
売却価格3,000万円
住宅ローン残高3,500万円
のように売却価格よりローン残高のほうが多い場合には、不足分500万円などを自己資金で準備しなければ売却できないことがあります。
非居住者は源泉徴収まで考えた資金計画が必要
海外在住者の場合、さらに注意したいのが源泉徴収です。
たとえば5,000万円で売れてローン残高が4,600万円だったとします。
「5,000万円入るからローンを返せる」と考えていても、源泉徴収が必要な取引では決済時に売主へ支払われる金額が約4,489万円になる可能性があります。
すると、単純計算ではローン返済資金が不足します。
もちろん実際には金融機関や買主などと決済方法を調整することになりますが、海外在住者が住宅ローン付き不動産を売却する場合には、査定価格だけでなく、
売却価格-源泉徴収-諸費用-ローン残高
まで確認することが重要です。
スタッフ植松「非居住者の売却で私が特に注意したいと思うのは、“売却価格”と“決済日に使えるお金”は同じではないという点です。ローン残高が多い物件ほど、源泉徴収まで含めた資金計画を先に確認したほうが安心です。」
海外在住中の元自宅を売る場合は3,000万円特別控除も確認する
海外赴任前まで自宅として住んでいたマンションや戸建てを売却するケースでは、居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除を利用できる可能性があります。
一定の要件を満たすと、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる制度です。
ただし、海外へ転出してから何年経過しているかなどによって適用可否が変わります。
以前住んでいた住宅については、住まなくなった日から一定期間内の売却であることなどの条件があります。
「海外転勤から時間が経っているけれど、元自宅だから当然3,000万円控除が使える」
とは限りません。
逆に、
「今は海外に住んでいるから3,000万円控除は使えない」
と決めつける必要もありません。
元自宅を売る場合には、売却時期を決める前に適用要件を確認することが重要です。
特に海外赴任が3年、4年と長期化している場合には、売却時期によって適用の可能性が変わることがあるため、早めに確認しましょう。
海外赴任中の賃貸物件を売却するときの注意点
海外転勤に伴って自宅を賃貸に出している方もいます。
帰国予定がなくなったため、その物件を賃貸中のまま売却したいというケースです。
賃借人が入居した状態で売却する場合、一般的には「オーナーチェンジ物件」として投資家向けに売却することになります。
空室物件とは査定方法が変わることがある
自己居住用マンションとして売却する場合は、
- 周辺の成約価格
- 部屋の広さ
- 階数
- 方角
- 眺望
- 内装状態
などが重視されます。
一方、賃貸中の投資物件の場合には、
- 現在の賃料
- 管理費
- 修繕積立金
- 利回り
- 賃貸借契約内容
- 入居状況
なども価格判断に大きく影響します。
そのため、「同じマンションの空室住戸が6,000万円で売れているから、自分の部屋も6,000万円」と単純には判断できません。
現在の賃貸状況を踏まえて査定する必要があります。
海外在住者が売却する前に確認したい税金以外の費用
不動産売却では所得税以外にもさまざまな費用が発生します。
仲介手数料
不動産会社へ仲介を依頼し売買が成立した場合には、仲介手数料が発生します。
売却価格に応じて上限額が定められています。
印紙税
紙の不動産売買契約書を作成する場合には、契約金額に応じた印紙税がかかります。
契約方法によって取り扱いが異なるため、契約時に確認します。
抵当権抹消費用
住宅ローンを完済して抵当権を抹消する場合には、登録免許税や司法書士報酬などが必要になることがあります。
住所変更等の登記費用
登記簿上の住所と現在の住所が異なる場合などには、売却に伴って別途登記手続きが必要になることがあります。
海外転出者の場合、住所の変更履歴を証明する書類が必要になることもあります。
住宅ローンの一括返済費用
金融機関によっては、住宅ローンを一括返済するときに手数料が発生する場合があります。
売却前に金融機関へ残高と必要手続きを確認しておきましょう。
海外在住者は売却代金の受取方法も確認しておく
売却代金をどの口座で受け取るかも事前に確認しておきたいポイントです。
日本国内の銀行口座をそのまま維持している方もいれば、海外転出に伴い口座の利用条件が変わっている方もいます。
金融機関によって非居住者の口座利用に関する取り扱いは異なります。
「昔使っていた日本の口座があるから、そこへ数千万円を振り込めば問題ないだろう」と決めつけず、大きな売却代金を受け取れる状態か事前に金融機関へ確認しましょう。
海外口座への送金を考えている場合には、送金手数料や必要書類、送金上限、マネーロンダリング対策に伴う確認なども考慮する必要があります。
さらに、円で受け取った代金を現地通貨へ交換する場合には為替変動もあります。
売却価格だけでなく、最終的にどの通貨でどこに資金を置くのかまで考えておくと安心です。
海外居住国での税務申告が必要になる可能性もある
日本の不動産を売却した場合、日本で確定申告をすればすべての税務手続きが完了するとは限りません。
現在住んでいる国の税制によっては、日本の不動産売却による利益について現地でも申告が必要になる可能性があります。
日本と居住国との間に租税条約がある場合には二重課税を調整する仕組みが設けられていることもありますが、内容は国によって異なります。
アメリカ、シンガポール、オーストラリア、イギリスなど、どこに居住しているかによって取り扱いは同じではありません。
そのため、
日本側の税金
と
現在の居住国側の税金
は分けて確認することが大切です。
高額な売却益が出る場合には、居住国の税務に詳しい専門家にも確認することをおすすめします。
海外から大阪の不動産を売るときに考えたいポイント
海外から大阪市や北摂の物件を売却する場合、所有者自身が現地の変化を把握しにくいことがあります。
海外赴任してから5年、10年と経過していれば、購入当時とは周辺環境や市場価格が大きく変わっている可能性があります。
大阪市内のマンションは購入時価格だけで判断しない
大阪市北区・中央区・西区・福島区などでは、マンションごとに相場の差があります。
同じエリアでも、
- 駅距離
- 築年数
- 管理状態
- 階数
- 方角
- 眺望
- 専有面積
などによって価格は変わります。
特に海外転勤中に賃貸へ出しているマンションでは、空室で売る場合と賃貸中のまま売る場合で想定買主が変わることがあります。
現在の賃貸契約状況も含めて検討しましょう。
豊中市・吹田市・箕面市の戸建ては土地価値も確認する
北摂エリアで戸建てを所有している場合、建物だけでなく土地としての評価も重要です。
長期海外赴任によって築年数が経過していても、
「築年数が古い=価値がない」
とは限りません。
土地面積、駅距離、道路条件、用途地域、周辺需要などによっては、土地として一定の需要が見込める場合があります。
そのため、古い戸建てを売却するときも、自己判断で解体や大規模リフォームを行う前に現状で査定を受けることをおすすめします。
海外在住者が不動産売却を先延ばしにするときに考えたいこと
海外赴任当初は、
「3年後には日本へ帰る予定だから、そのまま持っておこう」
と考えていても、その後予定が変わることがあります。
赴任期間が延びたり、現地転職したり、永住を決めたりすれば、日本の住宅を使う予定がなくなることもあるでしょう。
そのとき重要なのは、「所有し続ける目的が現在もあるか」を改めて確認することです。
空き家なら固定資産税や管理費、修繕費がかかります。
マンションなら管理費や修繕積立金が継続します。
賃貸中なら収入が得られる一方、管理や修繕、入居者対応も必要です。
さらに築年数が進めば建物評価や売却条件が変わることもあります。
海外にいると、日本の不動産はどうしても「見えない資産」になりがちです。
しかし、所有している限り費用もリスクも続きます。
「帰国する可能性があるから持っておく」
「賃貸収益があるから保有する」
「今後使わないため売却する」
というように、現在の状況に合わせて保有目的を見直すことが大切です。
海外から売却するときは早めの準備が重要
国内居住者の売却であれば、必要書類に不足があっても役所へ行って取得できることがあります。
しかし、海外在住者の場合はそう簡単ではありません。
署名証明や在留証明を取得するために在外公館での手続きが必要になったり、日本との郵送に時間がかかったりすることがあります。
さらに、
- 登記住所の変更
- 住宅ローンの確認
- 納税管理人の選任
- 購入時資料の確認
- 売却代金の受取口座
- 源泉徴収の確認
など、通常の売却より事前確認事項が多くなります。
そのため、「買主が見つかってから書類を準備する」のではなく、査定を受ける段階から必要書類と税務手続きを整理しておくことをおすすめします。
特に売却価格が高額になる大阪市中心部のマンションやビル、土地などでは、10.21%の源泉徴収額だけでも数百万円から1,000万円を超える場合があります。
売却価格だけを見て資金計画を立てるのではなく、
想定売却価格
源泉徴収の有無と金額
住宅ローン残高
売却諸費用
想定譲渡所得
をセットで確認することが重要です。
海外在住であること自体は、日本の不動産を売却できない理由にはなりません。
ただし、非居住者の売却には国内居住者にはない源泉徴収や納税管理人、海外住所・署名を証明する書類などの準備があります。
「いつか帰国したときに売ればいい」と考えている場合でも、現在の価格だけは確認しておくと判断材料になります。
日本へ帰国して売るのか、海外にいるうちに売るのか。
賃貸を続けるのか、現金化するのか。
その判断をするためにも、まず「今売った場合にいくらになるのか」と「売却した場合の手取り額」を把握することから始めるとよいでしょう。
