「息子に家を売るだけだから、相場より安くしてあげたい」
「親からマンションを500万円で買えば、贈与ではなく売買になる?」
「知人への売却なら、お互いが納得した金額で売っても問題ない?」
不動産を親族や知人へ売却するとき、このように考える方は少なくありません。
一般の買主へ売却する場合は「できるだけ高く売りたい」と考えるものですが、親子・兄弟姉妹などの親族間では事情が変わります。
親から子へ家を譲りたい。
子どもの住宅購入を援助したい。
兄弟間で相続した不動産を整理したい。
長年住んでいる親族へ安く売ってあげたい。
親しい知人だから市場価格より安くしてあげたい。
こうした理由から、あえて売却価格を低く設定することがあります。
しかし、ここで注意しなければならないのが**「低額譲渡」**です。
例えば市場で4,000万円程度の価値がある不動産を、親から子へ500万円で売却したとします。
契約書を作成し、子どもが実際に500万円を支払ったとしても、
「500万円できちんと売買したのだから贈与ではない」
と必ずしも言い切れるわけではありません。
個人から著しく低い価額で財産を譲り受けた場合には、その財産の時価と実際に支払った対価との差額に相当する部分を贈与によって取得したものとみなされる可能性があるからです。
つまり、
「無料でもらったら贈与」
「1円でもお金を払えば売買」
という単純な線引きではありません。
不動産を売りたい方にとって特に重要なのは、
誰に売るかだけでなく、「いくらで売るか」によって売主・買主双方の税務が変わる可能性がある
ということです。
この記事では、大阪市や豊中市・吹田市・箕面市などでマンション・戸建て・土地・ビルの売却を検討している方に向けて、親族・知人への低額譲渡で注意したい贈与税、時価の考え方、売主側の譲渡所得税、適正価格の確認方法、売却前にやっておきたい対策まで詳しく解説します。
親族や知人に不動産を安く売ること自体は禁止されていない
最初に整理しておきたいのは、
不動産を市場価格より安く売ること自体が直ちに禁止されているわけではない
という点です。
通常の不動産売買でも売却価格は売主と買主の合意によって決めます。
例えば市場では3,500万円程度で取引されそうなマンションについて、
「3,400万円なら売ります」
「3,200万円なら購入します」
などと交渉することは珍しくありません。
売主が早期売却を希望している。
室内の状態が悪い。
売却後の契約条件を考慮する。
買主が現金で早く購入できる。
などの理由によって市場価格より低い金額で成約することもあります。
問題になるのは、単に「相場より少し安い」ということではありません。
時価と比較して著しく低い価格で財産を移転した場合です。
低額譲渡とは?
一般的に低額譲渡とは、財産を時価より低い価格で譲渡することをいいます。
例えば、仮に時価4,000万円の土地があるとします。
通常の第三者へ4,000万円前後で売却するところを、親から子へ1,000万円で売却したとします。
形式上は、
売主:親
買主:子
売買価格:1,000万円
という不動産売買です。
しかし、経済的に見ると子どもは4,000万円程度の財産を1,000万円で取得しています。
差額は3,000万円です。
このように、著しく低い価格で財産を取得することで買主が大きな経済的利益を受けた場合、その差額について贈与税の問題が生じる可能性があります。
買主に贈与税がかかる可能性がある
個人から個人へ著しく低い価額で財産を譲渡した場合、税務上特に注意したいのが買主側です。
一定の場合には、
財産の時価-実際に支払った金額
に相当する部分について、売主から買主への贈与があったものとみなされる可能性があります。
仮に、
不動産の時価:4,000万円
実際の売買価格:1,000万円
だったとします。
単純な差額は、
4,000万円-1,000万円=3,000万円
です。
このケースで低額譲受けに該当すると判断されれば、この差額相当額について贈与税の対象となる可能性があります。
※実際の贈与税額は、その年の他の贈与、適用する課税方式、各種特例などによって異なります。
「売買契約書を作れば贈与にならない」は間違い
親族間売買でよくある誤解が、
「きちんと売買契約書を作っておけば贈与にはならない」
というものです。
売買契約書はもちろん重要です。
しかし、契約書のタイトルが「不動産売買契約書」だからといって、税務上必ずすべてが通常の売買として扱われるとは限りません。
重要なのは実態です。
実際に代金を支払っているのか。
売買価格はいくらなのか。
その不動産の時価はいくらなのか。
売主と買主はどのような関係なのか。
なぜその価格になったのか。
といった事情が関係します。
スタッフ植松親子間の不動産売買で私が最も注意したいと考えているのは、「お金を少しでも払えば贈与ではない」という思い込みです。売買契約を結んでいても、価格が時価と大きく離れていれば、差額について贈与税の問題が生じる可能性があります。
親から子へ安く売るケースだけではない
低額譲渡というと、
「親から子へ不動産を安く売るケース」
をイメージする方が多いでしょう。
しかし問題になる可能性があるのは親子だけではありません。
例えば、
・親から子
・子から親
・祖父母から孫
・兄から弟
・姉から妹
・叔父・叔母から甥・姪
・夫婦間
・その他の親族間
・知人間
などがあります。
個人から著しく低い価額で財産を譲り受けた場合に問題となる制度なので、
「親族ではなく友人だから大丈夫」
とも限りません。
なぜ安く売ったのに買主へ税金がかかるの?
売主からすると、
「自分の不動産なのだから、いくらで売っても自由では?」
と思うかもしれません。
民事上、当事者間で売買価格を決めることと、税務上どのように評価されるかは分けて考える必要があります。
例えば、
Aさんが4,000万円相当の不動産をBさんへ4,000万円で売却した場合。
Bさんは4,000万円を支払って4,000万円相当の財産を取得します。
一方、
4,000万円相当の不動産を500万円で取得できた場合。
Bさんは500万円しか負担していないのに、4,000万円相当の財産を取得しています。
経済的には大きな利益を受けていることになります。
その利益について、一定の場合に贈与があったものとして取り扱うのが低額譲受けの考え方です。
「時価の半額以上なら大丈夫」は危険
低額譲渡についてインターネットで調べると、
「時価の50%以上なら贈与税はかからない」
「半額を下回ると低額譲渡になる」
といった説明を見かけることがあります。
ここは特に注意してください。
個人から個人への低額譲受けに関する贈与税について、「時価の50%以上なら絶対に安全」という一律の基準はありません。
「著しく低い価額」に該当するかどうかは、個々の具体的な事情に基づいて判断されます。
したがって、
時価4,000万円だから2,100万円なら絶対大丈夫。
時価3,000万円だから1,510万円なら贈与税は絶対にかからない。
という考え方は危険です。
なぜ「50%」という数字が出てくるの?
50%という数字がまったく無関係なわけではありません。
所得税には、個人が法人へ資産を著しく低い価額で譲渡した場合などについて、時価の2分の1未満という基準が関係する規定があります。
しかし、
個人から個人へ不動産を安く売った場合の買主側の贈与税の判定と、その「2分の1基準」は同じものではありません。
この2つを混同しないことが重要です。
では「著しく低い価格」はいくらなの?
ここが低額譲渡の難しいところです。
「市場価格より10%安ければアウト」
「20%までならセーフ」
「半額ならアウト」
というような、すべての不動産へ機械的に適用できる数値基準ではありません。
個々の具体的な事案に基づいて判断されます。
だからこそ親族間売買では、
「ギリギリまで安くするにはいくら?」
と考えるより、
なぜその売買価格になったのかを客観的に説明できる状態を作る
ことが重要だと考えます。
低額譲渡でいう「時価」とは?
ここで次の疑問が出てきます。
「そもそも時価って何?」
不動産にはいくつもの価格があります。
例えば、
実勢価格。
公示地価。
基準地価。
相続税路線価。
固定資産税評価額。
不動産会社の査定価格。
実際の成約価格。
などです。
これらは目的が異なるため、同じ不動産でも金額が一致するとは限りません。
固定資産税評価額=売却時の時価とは限らない
親族間売買で特に注意したいのが、
「固定資産税評価額が2,000万円だから、2,000万円で売れば大丈夫だろう」
という考え方です。
固定資産税評価額と通常の市場で取引される価格は別のものです。
大阪市内のマンションや土地などでは、市場価格と固定資産税評価額に大きな差が生じるケースもあります。
固定資産税評価額だけを見て売買価格を決めるのは避けた方がよいでしょう。
相続税路線価=そのまま売却時価でもない
土地の場合、
「路線価を調べれば時価がわかる」
と思う方もいます。
しかし相続税路線価は、相続税や贈与税の財産評価などに利用するためのものです。
実際の不動産市場で成立する取引価格と必ず一致するものではありません。
親族間売買の価格を検討するときには、
路線価だけ。
固定資産税評価額だけ。
という単一の指標ではなく、実際の市場価値も把握することが重要です。
不動産の市場価格を確認する方法
売却価格を検討するときは、例えば次のような情報を確認します。
・周辺の成約事例
・同じマンションの成約事例
・近隣の売出事例
・土地の形状
・接道条件
・駅からの距離
・築年数
・建物状態
・階数・方角
・専有面積
・賃貸中か空室か
・権利関係
・再建築の可否
マンションなら同じ建物の成約事例が非常に参考になることがあります。
土地・戸建ての場合は、同じ町内でも接道や土地形状によって価格が変わるため、より個別性が高くなります。
大阪市内では同じ面積でも価格差が大きい
例えば大阪市内のマンションでも、
北区。
中央区。
西区。
福島区。
天王寺区。
都島区。
城東区。
阿倍野区。
など、エリアによって相場が異なります。
さらに同じ区でも、
駅徒歩3分と15分。
築5年と築30年。
高層階と低層階。
南向きと別方位。
60㎡と80㎡。
では価格が変わります。
「大阪市のマンションだから坪○万円」
という大まかな数字だけで親族間の売買価格を決めるのは危険です。
豊中市・吹田市・箕面市では土地条件も重要
北摂エリアの戸建てや土地では、
駅距離。
学校区。
土地面積。
間口。
接道方向。
高低差。
土地形状。
建築条件。
周辺環境。
などが価格へ大きく影響することがあります。
例えば同じ50坪でも、
整形地。
旗竿地。
大きな高低差がある土地。
再建築に制約がある土地。
では市場価値が違います。
「近所が5,000万円で売りに出ているから、この家も5,000万円」
とは限りません。
売出価格と成約価格は違う
親族間売買の価格を決めるとき、
不動産ポータルサイトで近隣物件を検索する方もいるでしょう。
そこで注意したいのが、
掲載されている価格は基本的に「売出価格」であり、実際に成約した価格とは限らない
ということです。
5,000万円で売り出していても、
4,700万円で成約した。
まだ半年以上売れていない。
という可能性があります。
客観的な価格を考えるなら、売出事例だけでなく成約事例も重要です。
親族間売買こそ査定を取る意味がある
一般市場へ売らないので、
「不動産査定はいらない」
と思うかもしれません。
しかし私は、むしろ親族間売買だからこそ市場価格を確認する意味が大きいと考えています。
第三者への通常売却なら、買主との価格交渉そのものが市場価格を形成します。
一方、親子間では、
「息子だから安く」
「親だからこの金額で」
という感情が価格へ入りやすくなります。
そこで客観的な査定を取っておけば、
通常ならいくらで売れそうなのか。
親族へいくらで売る予定なのか。
どの程度差があるのか。
を把握できます。
スタッフ植松親族間売買では「家族だから価格は適当でいい」と考えがちですが、私はむしろ逆だと思います。第三者同士ではないからこそ、通常ならいくらで売れる物件なのかを先に数字で確認しておくことが大切です。
1社の査定価格だけで時価が確定するわけではない
不動産会社の査定書があれば、
「この金額が税務上の時価として100%認められる」
というわけではありません。
査定はあくまで市場価格を検討するための材料です。
特に高額な不動産や、市場価格と売買価格に大きな差をつける予定がある場合には、税理士や不動産鑑定士など専門家への確認も検討した方がよいでしょう。
親へ「1円」で売れば贈与ではなく売買になる?
極端な例ですが、
「贈与すると贈与税がかかるなら、1円で売れば売買になるのでは?」
と考える方がいるかもしれません。
しかし、形式だけ売買にしても、著しく低い価額で財産を取得したことによる経済的利益について贈与税の問題が生じる可能性があります。
1円。
10万円。
100万円。
など、形式的に代金を設定すれば贈与税を回避できるというものではありません。
代金を払ったことにして実際には払わないケースはさらに注意
売買契約書には、
「売買代金2,000万円」
と記載している。
しかし実際には子どもから親へお金を払っていない。
あるいは一度振り込んだ後、親から子へそのまま返金している。
このような取引では、契約書上の価格だけでなく実際のお金の流れが重要になります。
親族間売買では、
売買契約。
振込記録。
資金の出所。
代金の受領。
などを明確にしておくことが大切です。
親が子どもへ売却代金を贈与する場合は別の贈与問題が生じる
例えば、
親から子へ3,000万円でマンションを売却。
子が3,000万円を親へ支払う。
その後、親がその3,000万円を子へ贈与する。
という形にした場合、
不動産売買と現金贈与は別の取引として税務を検討する必要があります。
「一度売買代金を支払ったから問題ない」
という単純な話ではありません。
親族間売買では住宅ローンにも注意
子どもが親から住宅を購入するとき、
「普通の中古住宅と同じように住宅ローンを借りればいい」
と考えるかもしれません。
しかし金融機関によっては親族間売買について通常の住宅ローンより慎重に審査する場合があります。
理由の一つは、
本当に売買なのか。
実質的な贈与ではないか。
不自然な資金移動ではないか。
物件価格は妥当なのか。
などを確認する必要があるためです。
住宅ローンを利用する予定なら、売買価格を決める前に融資条件を確認しておく方が安全です。
住宅ローン控除も「親族から買えば当然使える」とは限らない
親族間売買では、税務上の各種制度について通常の第三者間売買と同じように利用できるとは限りません。
住宅ローン控除などについても、
誰から取得するのか。
取得者と売主の関係。
居住要件。
床面積。
借入期間。
その他の要件。
を確認する必要があります。
「住宅を買った=住宅ローン控除が使える」
と決めつけず、売買前に確認しておきましょう。
売主側には譲渡所得税の問題がある
ここまで買主側の贈与税を中心に説明しました。
しかし、不動産を売る以上、売主側にも税金の問題があります。
土地・建物を売却して利益が出た場合、原則として譲渡所得を計算します。
基本的な考え方は、
譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-適用できる特別控除=課税譲渡所得
です。
安く売れば売主の税金も必ず安くなる?
第三者間の通常の売買であれば、譲渡所得の収入金額は基本的に実際の譲渡対価です。
しかし低額譲渡では、
売主が個人なのか法人なのか。
買主が個人なのか法人なのか。
どの程度低い価格なのか。
によって税務上の取り扱いが異なる場合があります。
特に個人から法人へ土地・建物を時価の2分の1未満で売却した場合などには、所得税上、時価によって譲渡したものとみなされる規定があります。
したがって、
「安く売れば譲渡所得税も必ず安くできる」
と考えるのは危険です。
「個人→個人」と「個人→法人」を同じに考えない
低額譲渡について調べると情報が混乱しやすい理由の一つがここです。
例えば、
親個人→子個人
と、
親個人→子どもが経営する法人
では、同じ低額譲渡でも検討すべき税務が異なります。
さらに、
法人→個人
法人→法人
でも取り扱いは変わります。
この記事では主に「親族・知人など個人間の売買」を想定していますが、法人が関係する場合は別途税務確認が重要です。
譲渡所得税では所有期間も重要
土地・建物の譲渡所得は、所有期間によって長期譲渡所得・短期譲渡所得に区分されます。
売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超える場合は、原則として長期譲渡所得。
5年以下なら短期譲渡所得です。
単純に、
「購入してから丸5年経った」
というだけで判断しない点に注意しましょう。
親から相続した不動産を兄弟へ売る場合
例えば父親が亡くなり、長男と次男が相続人だったとします。
遺産分割の結果、長男が不動産を相続。
その後、
「次男が住みたいから安く売ってあげよう」
となるケースも考えられます。
この場合も相続が終わった後の兄弟間売買として、
不動産の時価。
売買価格。
差額。
譲渡所得。
贈与税。
などを検討する必要があります。
「もともと父親の財産だったから、兄弟間なら自由に移せる」
というわけではありません。
共有持分を親族へ安く売るケース
不動産全体ではなく共有持分を売却するケースもあります。
例えば、
兄:2分の1
弟:2分の1
で共有している土地について、兄の持分を弟へ売却して単独所有にするケースです。
共有持分は不動産全体とは市場性が異なるため、
「土地全体が4,000万円だから2分の1持分は必ず2,000万円」
とは限りません。
一方、兄から弟へ売る場合には、弟が残りの持分を取得することで不動産全体を単独所有できるという特殊な事情もあります。
このようなケースは単純な面積按分だけで価格を決めるのが難しくなります。
賃貸中の物件を親族へ売る場合
賃貸中のマンション・戸建て・ビルなどでは、空室の物件とは市場価値の考え方が異なる場合があります。
例えば収益物件なら、
年間賃料。
稼働率。
管理費。
修繕費。
利回り。
賃貸借契約。
テナント状況。
などから投資価値を判断します。
空室なら5,000万円の物件でも、賃貸条件によって市場価格が異なる可能性があります。
親族間売買だからこそ、物件の実際の状態に応じた価格を確認することが重要です。
古い家だから100万円で売っても大丈夫?
大阪市内や北摂で古い戸建てを相続した方から、
「建物はボロボロだから100万円くらいで子どもへ売っても問題ないのでは?」
と考えるケースがあります。
しかし建物が古くても、土地に価値がある可能性があります。
例えば建物価値がほとんどなくても、
大阪市内。
駅徒歩10分。
30坪。
整形地。
公道に接道。
建て替え可能。
という土地なら、土地自体に相応の市場価値があるかもしれません。
「建物が古い=不動産全体の価値がほぼゼロ」
ではありません。
再建築不可などの事情があれば市場価格が低くなることもある
反対に、周辺の一般的な土地より大幅に安いからといって、直ちに不自然とは限りません。
例えば、
再建築不可。
極端な旗竿地。
大きな高低差。
借地権。
共有持分のみ。
賃貸借契約上の制約。
重大な建物不具合。
などがあれば市場価値そのものが低くなる可能性があります。
重要なのは、
「近所の普通の土地より安い」ことではなく、その不動産固有の条件を踏まえた時価と売買価格を比較すること
です。
事故物件など心理的要因がある場合も同様
過去に死亡事案などがあり市場性へ影響している物件の場合も、通常の物件と同じ価格で評価できない可能性があります。
このような特殊事情がある不動産では、
「親族へ安く売ったから低額譲渡」
なのか、
「そもそも市場価値が低かった」
のかを区別することが重要になります。
親族間売買で用意しておきたい資料
価格の根拠を整理するため、次のような資料が役立つ場合があります。
- 土地・建物の登記事項証明書
- 固定資産税課税明細書
- 公図
- 地積測量図
- 建物図面
- 購入時の売買契約書
- 周辺の成約事例
- 不動産査定書
- 修繕・リフォーム履歴
- 賃貸中なら賃貸借契約書
- 建物に問題がある場合はその資料
- 売買代金の振込記録
売買代金は記録が残る方法で支払う
親族間売買では、
「現金で渡した」
「毎月少しずつ返した」
「生活費と相殺した」
など、お金の流れが曖昧になりやすい傾向があります。
可能な限り、
売買契約書。
銀行振込。
領収書。
返済予定表。
など、実際に代金を支払ったことを確認できる状態にしておく方がよいでしょう。
分割払いにする場合にも注意
例えば子どもが一括で3,000万円を準備できないため、
頭金500万円。
残り2,500万円を親へ毎月返済。
という形にすることも考えられます。
この場合、
返済期間。
返済金額。
利息。
支払日。
滞納時の扱い。
などを決める必要があります。
単に、
「いつか払ってくれればいい」
という状態では、売買代金の支払いなのか、実質的に利益を与えているのかが曖昧になりかねません。
売買代金を免除すると別の贈与問題が生じる可能性がある
例えば親から子へ3,000万円で売却し、
子どもが1,000万円だけ支払ったところで、
「残り2,000万円はもう払わなくていい」
と親が債務を免除した場合。
債務免除によって子どもが経済的利益を受けるため、別途贈与税の問題が生じる可能性があります。
売買価格だけでなく、契約後のお金の動きまで考えることが重要です。
「売却」と「贈与」のどちらが有利かは税額だけで決めない
親から子へ不動産を移す方法として、
売買。
生前贈与。
将来の相続。
などがあります。
どれが有利なのかは、
不動産価格。
取得時期。
取得費。
売却益。
親の資産状況。
相続人。
将来の相続税。
登録免許税。
不動産取得税。
利用できる特例。
などによって変わります。
「贈与税が高そうだから100万円で売ろう」
という方法が最も有利とは限りません。
買主には不動産取得税や登記費用もある
親族間で不動産を取得するときは、贈与税だけを見ないようにしましょう。
取得方法や物件条件によって、
不動産取得税。
登録免許税。
司法書士費用。
住宅ローン関連費用。
なども発生する可能性があります。
売主と買主を合わせた総コストで比較することが重要です。
売却価格3,000万円なら手取り3,000万円ではない
売主側も同様です。
売却価格から、
仲介手数料が発生する場合。
印紙税。
抵当権抹消費用。
測量費。
その他の譲渡費用。
譲渡所得税等。
などを差し引く必要があります。
そのため親族へ売るか第三者へ売るか比較するときも、
売却価格ではなく最終的な手取り
を見るべきです。
第三者へ4,000万円・親族へ3,000万円ならどちらを選ぶ?
例えば市場では4,000万円程度で売却できる物件について、
第三者への売却:4,000万円
子どもへの売却:3,000万円
という選択肢があったとします。
「子どもへ1,000万円安く譲ってあげたい」
という気持ちは理解できます。
しかし決定する前に、
低額譲受けに該当する可能性。
買主側の贈与税。
売主側の譲渡所得税。
住宅ローン。
登記費用。
不動産取得税。
将来の相続。
を含めて検討した方がよいでしょう。
家族全体で見ると、想定していなかった税負担が発生する可能性があるからです。
スタッフ植松親族へ安く譲ってあげたいという気持ちは自然です。ただ、不動産では「1,000万円値引きしてあげたつもり」が、買主側の贈与税という別の負担につながる可能性があります。価格だけでなく、売主・買主双方の手取りと税金を一緒に見ることが大切です。
第三者へ売却して現金を贈与する方法との比較も必要
親族へ財産を渡したい場合、
不動産そのものを安く売る方法だけが選択肢ではありません。
例えば、
不動産を第三者へ市場価格で売却。
その後、現金を家族へ贈与。
という方法も考えられます。
もちろん現金贈与にも贈与税の問題があります。
しかし、
不動産を低額で移転する方法。
通常価格で売却して現金を移す方法。
将来相続させる方法。
などを比較すると、税金や資産管理の結果が変わる可能性があります。
大阪市のマンションを子どもへ売るときの考え方
大阪市内のマンションなら、比較的市場価格を確認しやすい場合があります。
特に取引件数が多いマンションなら、
同じマンション。
同じ間取り。
近い階数。
同程度の専有面積。
近い成約時期。
などの事例を比較できます。
例えば同マンションの70㎡前後の住戸が直近で4,500万~4,800万円程度で複数成約しているのに、特別な事情もなく子どもへ1,000万円で売却するのであれば、大きな価格差があります。
このようなケースほど、契約前に税務確認を行うことが重要です。
戸建て・土地はマンション以上に個別査定が重要
戸建て・土地はマンションより価格の個別性が高い傾向があります。
例えば大阪市内の土地なら、
間口。
奥行き。
前面道路。
接道方向。
用途地域。
建ぺい率。
容積率。
セットバック。
再建築可否。
古家の状態。
などが影響します。
豊中市・吹田市・箕面市などでは、高低差や擁壁などが価格へ大きく影響するケースもあります。
路線価や近隣の売出価格だけで親族間売買の金額を決めるのではなく、物件そのものを査定することが大切です。
ビル・収益物件を親族へ売却する場合
一棟ビルや収益マンションでは、さらに注意が必要です。
市場価格を考える際には、
土地・建物価格。
年間賃料。
空室率。
テナント属性。
修繕履歴。
利回り。
将来必要な大規模修繕。
管理コスト。
などを考慮します。
「固定資産税評価額が5,000万円だから5,000万円で息子へ売る」
というだけでは、収益不動産としての市場価値を反映していない可能性があります。
親族間売買をする前の12項目チェック
契約書を作る前に、最低限次の項目を確認しておきたいところです。
- 現在の所有者は誰か
- 誰へ売却するのか
- 通常の市場価格はいくらか
- 売買予定価格はいくらか
- 市場価格との差はいくらか
- その価格にした合理的な理由があるか
- 買主側に贈与税の問題がないか
- 売主側の譲渡所得税はどうなるか
- 買主は売買代金を実際に支払えるか
- 住宅ローンを利用できるか
- 登記・不動産取得税等を含む費用はいくらか
- 売買・贈与・相続のどの方法が目的に合うか
契約する前に税金を確認することが重要
低額譲渡で怖いのは、
「売買が終わってから税金に気付く」
ことです。
所有権移転登記まで終わった後に、
「贈与税がかかる可能性があるとは知らなかった」
となっても、すでに不動産は移転しています。
だからこそ、
査定。
価格検討。
税務確認。
融資確認。
契約。
という順番で進めることが重要です。
親族へ売る予定でも、まず第三者へ売った場合の価格を知る
親族間売買を検討している方に私が最初に確認してほしい数字は、
「この不動産を普通に市場へ出したら、いくらで売れそうなのか」
です。
例えば、
市場価格4,500万円。
親族への予定売価4,200万円。
なのか、
市場価格4,500万円。
親族への予定売価500万円。
なのかでは意味がまったく違います。
市場価格がわからなければ、「安く売っているのかどうか」自体を判断できません。
親族・知人への不動産売却は「価格を決めてから税金を調べる」のでは遅い
親族や知人へ不動産を売却する場合、
「家族同士だから簡単」
と思われがちです。
しかし実際には、第三者への通常売却とは違った注意点があります。
特に重要なのが売買価格です。
個人から著しく低い価額で財産を取得すると、
時価と実際に支払った対価との差額について、買主が贈与によって取得したものとみなされる可能性があります。
そして、
「時価の半額以上なら絶対に大丈夫」
という一律の安全基準があるわけでもありません。
そのため、
固定資産税評価額だけを見る。
路線価だけを見る。
インターネットの売出価格だけを見る。
親が昔購入した金額をそのまま使う。
家族だから適当に価格を決める。
という方法は避けたいところです。
まずは現在の市場価値を確認します。
マンションなら同一マンションや近隣の成約事例。
戸建て・土地なら接道・土地形状・駅距離・建築条件など。
ビル・収益物件なら賃料や利回り、稼働状況。
こうした条件から、
「第三者ならいくらで買う可能性があるのか」
を考えます。
そのうえで親族・知人への売却予定価格と比較します。
価格差が大きいのであれば、
なぜその価格なのか。
低額譲受けの問題はないか。
買主へ贈与税が発生する可能性はないか。
売主側の譲渡所得税はどうなるか。
住宅ローンを利用できるか。
登記・不動産取得税などはいくらか。
まで確認してから契約することが重要です。
特に大阪市内のマンション・土地は、購入した時期によって現在の市場価格と取得価格が大きく異なっていることがあります。
豊中市・吹田市・箕面市など北摂エリアでも、駅距離、学校区、土地面積、接道、高低差などによって市場価格が大きく変わります。
親が、
「昔2,000万円で買った家だから、息子にも2,000万円で売ればいい」
と思っていても、現在5,000万円の市場価値があるかもしれません。
反対に、
「近所は5,000万円だから、この土地も5,000万円」
と思っていても、再建築不可や高低差などの事情によって市場価値が低い可能性もあります。
だからこそ親族間売買では、感覚ではなく現在の市場価値を把握することが出発点になります。
そしてもう一つ大切なのが、
「親族に安く売ること」そのものを目的にしないことです。
本来の目的は、
子どもに家を引き継いでもらいたい。
家族の住まいを確保したい。
共有状態を解消したい。
相続前に資産を整理したい。
不動産を現金化したい。
など、それぞれ違うはずです。
目的によっては、
親族間で売買する。
第三者へ市場価格で売却する。
現金化してから資産を移す。
将来の相続まで所有する。
といった別の方法が適している可能性もあります。
「贈与税を払いたくないから、とりあえず安い売買契約を作る」
という順番ではなく、
不動産の時価を確認する → 売主・買主双方の税金を確認する → 資金計画を確認する → 最も目的に合う方法を選ぶ
という順番で考えることが、親族・知人間の不動産売買では重要です。
